「平成」→「〇〇?」
「平成」という元号は来年の平成31年4月30日をもって幕を閉じ、翌5月1日からは新元号が施行されます。
明治、大正、昭和、平成と重複しないようにするならば、頭文字はM、T、S、H以外の、あ行、か行、な行、や行、ら行、わ行から始まる元号になるのでしょうか。。
・・少し脱線しましたが、新年号によりシステム修正を迫られる会社は少なくないのではないでしょうか。
そこで、新元号の施行に伴うシステム修正費用についての税務上の取扱いを検討してみます。
修繕費と資本的支出
まず、システム修正費用の税務上の処理としては、➀修繕費(費用計上)と②資本的支出(資産計上)の2パターンが考えられます。
修繕費
固定資産の修理・改良等のうち、通常の維持管理または原状回復と認められる支出。
法人税基本通達7-8-2 修繕費に含まれる費用
法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額が修繕費となるのであるが、次に掲げるような金額は、修繕費に該当する。
(1) 建物の移えい又は解体移築をした場合(移えい又は解体移築を予定して取得した建物についてした場合を除く。)におけるその移えい又は移築に要した費用の額。ただし、解体移築にあっては、旧資材の70%以上がその性質上再使用できる場合であって、当該旧資材をそのまま利用して従前の建物と同一の規模及び構造の建物を再建築するものに限る。
(2) 機械装置の移設(7-3-12《集中生産を行う等のための機械装置の移設費》の本文の適用のある移設を除く。)に要した費用(解体費を含む。)の額
(3) 地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額。ただし、次に掲げる場合のその地盛りに要した費用の額を除く。
イ 土地の取得後直ちに地盛りを行った場合
ロ 土地の利用目的の変更その他土地の効用を著しく増加するための地盛りを行った場合
ハ 地盤沈下により評価損を計上した土地について地盛りを行った場合
(4) 建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の浸害を受けることとなったために行う床上げ、地上げ又は移設に要した費用の額。ただし、その床上工事等が従来の床面の構造、材質等を改良するものである等明らかに改良工事であると認められる場合のその改良部分に対応する金額を除く。
(5) 現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用の額及び砂利道又は砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した費用の額
資本的支出
固定資産の修理・改良等のうち、価値の増加または耐久性の増加と認められる支出
法人税基本通達7-8-1 資本的支出の例示
法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、例えば次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。
(1) 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額
(2) 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
(3) 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額
(注) 建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。
平たく言えば、現状の機能・価値の維持のための支出であれば修繕費、新機能の追加や使用可能期間の延長のための支出であれば資本的支出になります。
修繕費とすれば期間費用(損金)として処理されますが、資本的支出とすれば資産計上(取得原価に算入)されますので、多額になればどちらに該当するのかによって損益(税額)のインパクトが異なることから、その判断は重要になります。
修繕費か資本的支出かを判断するのは、実務上その判断が難しいケースが多々ありますが、今回のような新元号の施行に伴うシステム修正費用は修繕費と資本的支出のどちらになるのでしょうか。
コンピューターの西暦2000年問題
これについては、過去の類似ケースとしてコンピューターの西暦2000年問題が参考になります。
これは当時のコンピューターは、1976年⇒77年といったように年号を西暦の下二桁で管理していることが多かったことから、1999年から2000年に切り替わるタイミングで、99→00と切り替わると1900年なのか2000年なのか区別できなくなりコンピューターが誤作動して予想外の重要なトラブルが起こるのでは?とされた問題で、Y2K問題とも呼ばれていました。
税務上の観点では、このような障害を除去するための費用はどのように扱われるか、についても注目を集めていましたが、国税庁は、次の条件を全て満たすのであれば、そのシステム修正のために支出した費用は「修繕費」とする取扱いを内部的に決定したそうです。
① 修正の内容が、システムの効用を維持するために行うものであること。
② その修正の実態が、資産に対する修繕と認められるものであること。
③ その修正内容について、それ以外の機能の付加を行うものでないことが明確である。
基本的には、法人税基本通達7-8-6の2の内容に沿ったものとなっています。
法人税基本通達7-8-6の2 ソフトウエアに係る資本的支出と修繕費
法人が、その有するソフトウエアにつきプログラムの修正等を行った場合において、当該修正等が、プログラムの機能上の障害の除去、現状の効用の維持等に該当するときはその修正等に要した費用は修繕費に該当し、新たな機能の追加、機能の向上等に該当するときはその修正等に要した費用は資本的支出に該当することに留意する。
(注) 既に有しているソフトウエア、購入したパッケージソフトウエア等の仕様を大幅に変更して、新たなソフトウエアを製作するための費用は、原則として取得価額となることに留意する。
まとめ
新元号の施行は、外部環境の変化に伴い必要に迫られた修正という点で過去の類似ケースと同様です。
また、元号変更によってシステムが使用不能になるのを防ぐための現状の機能・価値の維持の費用、ということであれば修繕費として認められると考えられます。
但し、新たな機能追加や、使用可能期間の延長などの機能向上となるシステム修正費用については資本的支出として処理することになりますのでご留意下さい。
なお実際に修正を依頼する際には、新年号対応以外の機能追加等が混在している可能性があります。
ベンダーさんから見積を貰う際には、修繕費か資本的支出かを区分するためにも、具体的な内訳内容を確認し、きちんと見積書等に記載されていることを確認しておきましょう!
新年号対応のために行われるものに限定されていることが明確にされていれば問題ないですね。
おまけ
ちなみに、新年号になった平成31年10月1日から消費税が10%に引き上げられる予定となっています。
その際にも、例えば「POSレジシステム」や「受発注システム」や「経理システム」などのプログラムを修正する、という話になることが予想されます。
こういったシステム修正費用についても、法人税基本通達7-8-6の2と同様に、プログラムの機能上の障害の除去,現状の効用の維持等に要した費用であれば「修繕費」,新たな機能の追加,向上等に要した費用であれば「資本的支出」となると考えられます。
ご参考まで。