交通違反による罰金

業務中の駐車違反やスピード違反による交通反則金は経費として計上することが出来るのでしょうか?ここでは、業務上やむを得ず罰金が掛かってしまったという前提で話を進めていきます。

目次

原則的には経費にできない

一般的に交通反則金は、自動車の所有者ではなく実際の反則者に課せられることになります。

会社所有の車による反則金であっても反則者である従業員自身が支払うことになります。

そのため、原則的には反則金を経費として計上することは出来ません。

例外はあるの?

法人の場合

社内規程等で業務上やむを得ない場合には会社が負担する、など一定の場合には経費として計上することは可能と考えられます。
業務遂行に関連してされた行為であり、経済的実質としては法人の罰金とも考えられるためです。

但し、これはあくまで会計上の取扱いのお話です。

税務上の取扱いは、少し複雑になります。

租税公課・雑費等とした場合

会計上は租税公課や雑費等として経費計上した場合、税務上は損金不算入として取扱います。

法人税基本通達の中に明文化されています。

(役員等に対する罰科金等)
9-5-8 法人がその役員又は使用人に対して課された罰金若しくは科料、過料又は交通反則金を負担した場合において、その罰金等が法人の業務の遂行に関連してされた行為等に対して課されたものであるときは法人の損金の額に算入しないものとし、その他のものであるときはその役員又は使用人に対する給与とする。(平21年課法2-5「八」により追加)

これは、損金算入を認めてしまうと、罰金分だけ会社の利益(所得)が減少し、結果として税金が減ることになるので、減った税金だけ罰金の効果が減少し、罰則を犯した者に対して課す罰の効果が減少することになるため、と考えられます。

ようは、罰金払っても節税にはならないということです。

 

給与等とした場合

上記の通達によると、業務の交通反則金を会社が負担した場合には、損金不算入とされています。

また、業務の交通反則金を会社が負担した場合には、本来負担すべき者に対する給与(役員であれば臨時的な給与=賞与)として取扱う旨が記載されています。

では、業務の交通反則金を、個人で一旦支払ってもらい、同額だけ給与等に含めて支給した場合はどうなるのか検討してみます。

(1)従業員のケース
会計上、給与として経費計上し、税務上は一定の場合(不相当に高額な特殊関係使用人への支給)を除いて、損金算入することになりますが、一方で当該支給分については源泉所得税、(翌年の)住民税の課税対象となります。

(2)役員のケース
会計上、役員報酬として経費計上した場合、役員報酬については毎月定額な場合(定期同額給与)が多数でしょうから、交通反則金分だけ「定額」ではなくなりますので、税務上も損金算入することは出来ません。更に当該支給分については源泉所得税、(翌年の)住民税の課税対象となります。

交通反則金を給与等とすれば、源泉所得税等は生じるものの、結果として損金算入されることで、こちらの方がお得にみえます。
実際に、『交通反則金を給与として支給して節税しましょう!』を謳った投稿サイトもあります。

しかし、租税公課・雑費で計上すると損金不算入で、給与等とすると損金算入、なんて都合の良い話はちょっと疑ってみた方が良いかもしれません。

実務上は、会計上は租税公課・雑費で計上し、税務上は損金不算入、というのが大半です。

また、役員の場合には、法人税と所得税(住民税)のダブルで課税となれば、本人にも会社にもマイナスですので得策とは言えません。

したがって、業務内の交通反則金を、個人で一旦支払ってもらい、同額だけ給与等に含めて支給する、という処理はお勧めすることは出来ません。

個人事業主の場合

業務上の交通反則金は必要経費とすることは出来ません。

所得税法の中に明文化されています。

第45条  家事関連費等の必要経費不算入等
居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない

六 罰金及び科料(通告処分による罰金又は科料に相当するもの及び外国又はその地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含む。)並びに過料

所得税の場合には法人税のような申告調整する仕組みはありませんので、必要経費に出来ないのは至極当然な取扱いだと思います。

そのため、事業主・その従業員共々、業務上の交通反則金は必要経費とすることは出来ません。

なお、従業員による業務外の交通反則金を事業主が負担する場合については、従業員に対する給与として必要経費にすることは理屈の上では可能かもしれませんが、プライベートの罰金を肩代わりするケースはレアでしょうし、そもそも経済合理性は認められないでしょうから、現実的な取扱いではないと考えられます。

レッカー車代や車両保管費用など

交通違反に付随して支払ったレッカー代等は、あくまでレッカー移動や保管に関する実費相当分を負担させる意味合いのものであって、反則金とは性質が異なりますので、法人・個人事業主いずれも、支払手数料として経費にすることができます。

ちなみに、消費税は不課税取引です。会計ソフトで仕訳を入力すると、自動的に課税取引と処理される勘定科目ですから、注意が必要です。

 

まとめ

交通事故は勿論ですが、交通違反のキップを切られないよう、十分な時間的余裕や駐車場の確保など、スムーズな車の利用が出来るよう日々努めましょう!

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