セルフメディケーション税制

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はじめに

医師の処方箋がなくてもドラッグストアや薬局で直接購入できる医薬品のことを一般にOTC医薬品といいますが、その中でも、医療用として使用されていた医薬品で、有効成分や服用方法等が全く同じまま市販されている医薬品のことをスイッチOTC医薬品といいます。代表的なものとしては、鎮痛剤のロキソニンSや胃腸薬のガスター10などがあります。

そして、このスイッチOTC医薬品を一定金額以上購入すると税制の優遇を受けることができるという制度、セルフメディケーション税制が本年度より導入されます。

セルフメディケーションとは?

セルフメディケーションを直訳すると、セルフ「自分」でメディケーション「治す」という意味合いになります。

例えば、風邪を引いた場合に、病院にいって診察を受けて薬を処方してもらい、それを飲んで治す人もいますが、一方で、軽い体調不良であれば病院に行かずに自分で薬を購入して治す人もいるでしょう。

このように、軽度な身体の不調は自分で手当てすることで、自分自身の健康に責任を持つような方については、国としても税金面から優遇しましょう、というのが、セルフメディケーション税制です。

セルフメディケーション税制の概要

健康の維持増進等の一定の取組を行う個人が、自己又は生計一親族等に係る一定のスイッチOTC医薬品の購入対価を支払った場合、合計額が1万2千円を超えるときは最大8万8千円を所得控除できる仕組みです。

以下、要点として、①利用期間、②利用対象者、③対象となる市販薬の種類、④控除額についてみていきましょう。

利用期間

平成29年1月1日から平成33年12月31日までの5年間の時限措置です。

利用対象者

自己の健康管理を行うための一定の取組を行うことが要件となっています。

一定の取組とは例えば下記になります。

  1. 特定健康診査(いわゆるメタボ検診)
  2. 予防接種(インフルエンザなど)
  3. 定期健康診断(事業主健診)
  4. 健康診査
  5. がん検診

この税制を受けるためには、対象商品を一定額以上購入するだけではなく、自己の健康管理を行うための一定の取組を行うことが要件のひとつとなっている点は注意する必要があります。

 

対象となる医薬品の種類

一般用医薬品(スイッチOTC医薬品)であり、具体的な対象商品については厚生労働省ホームページに掲載の「対象品目一覧」をご覧ください。

また一部の商品については、この税制の対象である旨を示す識別マークが掲載されているものもありますので、ドラッグストアにいったら下記のマークのついている薬を探してみましょう。

ネット購入の際には、各サイトで「セルフメディケーション税制対象商品」と表示されているところが多いみたいです。

 

 

 

控除額

1年間に、自分や家族(生計を一にするもの)が購入したスイッチOTC医薬品の合計が1万2000円を超えた金額で、最高8万8000円までが所得控除となります。所得控除なので、控除できる金額に税率を乗じた金額が節税額となります。

医療費控除との違いは?

従来までの医療費は、治療に関する病院の診察代や処方薬代などが対象で、原則として10万円を超えたときに、その超えた部分について所得控除ができる制度です。

一方でセルフメディケーション税制は、あくまでスイッチOTC医薬品の購入費用に限定されます。この購入金額が1万2千円を超えたときに、その超えた部分について所得控除ができる制度です。

このように、範囲が異なりますが、治療目的でスイッチOTC医薬品を購入したような場合には、両方の対象になるものもあり得ると考えられます。

 

注意点

セルフメディケーション税制は、あくまで「医療費控除の特例」という位置づけであることから、従来の医療費控除と併用することは出来ない点に注意する必要があります。

選択適用となっていますので、1年間、領収書(レシート)を集めて、どちらが有利なのかは、年度末に計算してみないと判断はできません。

また、通常の医療費控除と同様に、確定申告する必要があるので、年末調整では出来ない点もご留意ください。

まとめ

健康保険に加入している方は、医療費の自己負担が高額になった場合には高額療養費(自己負担限度額を超えた分が後から払い戻される制度)の制度があることから、医療費が10万円を超えること自体が稀で、「子供が生まれた」といった健康保険が使えない場合や、「手術した」「難病やがん治療で継続的に医療機関を利用した」といった特別な事情がある人には、より効果的な制度です。

今回新たに創設されたセルフメディケーション税制は、ドラッグストアなどで購入したスイッチOTC医薬品の購入額が1万2千円超(月額で換算すれば1,000円!)となれば適用できる可能性がありますので、ふだん医療費控除を申請していない方で、病院にあまり通わない方でも申告できる可能性がありますので、医療費関連の申告のハードルは下がったといえるのではないでしょうか。

そのため医療費の領収書だけでなく、スイッチOTC医薬品や健康診断等の領収書についても保管して、より有利な方を選択適用できるように今のうちから準備しておきましょう。

最も、セルフメディケーション自体には限界があります。OTC医薬品本来の役目は、軽度な症状の治療や予防を目的としていることから症状が改善しない場合や再発を繰り返す場合、悪化する場合には速やかに専門の医療機関の受診しましょう。

今年から、薬も税も、セルフコントロール、といったところでしょうか。

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