平成28年度税制改正大綱 ポイント①

キャプチャ税制改正

 

 

12月16日に与党(自由民主党・公明党)から平成28年度税制改正大綱が公表されました。

今後、国会で平成28年度税制改正法案が成立して初めて確定するものではありますが、例年、税制改正大綱と概ね同じ内容となっています。

全体で127ページと分量が多いことから、今回は、56ページから始まる法人課税を中心にみていきます。

 

目次

法定実効税率の段階的引き下げ

(1)法人税率の引き下げ

現在23.9%という法人税率ですが、

平成28年4月1日以後に開始する事業年度から23.4%

平成30年4月1日以後に開始する事業年度から23.2%

と段階的に引き下げるとされています。

 

なお、中小法人については、所得の800万円までの特例15%は、そのままですが、こちらは平成30年3月末までで、それ以降は今後検討することになっています。

キャプチャ法人税率の推移

 

 

(2)法人住民税率の引き下げと地方法人税率の引き上げ

平成29年度から、法人住民税(都道府県民税・市町村民税)の法人税割の標準税率(&制限税率)が引き下げられます。

この引き下げに伴い、地方法人税の税率が引き上げられます。

結果として、両者の引き上げ、引き下げが同率行われるだけなので、概ね税負担は同額となっています。

 

キャプチャ住民税等の推移

 

(3)法人事業税の税率引き下げと外形標準課税の拡大

①法人事業税の税率の改正

資本金1億円超の外形標準課税適用法人について、平成28年度以後の標準税率が見直されました。

具体的には、所得割の標準税率が引き下げられる一方で、外形標準課税(付加価値割・資本割)の標準税率が引き上げられます。

なお、外形標準課税(付加価値割・資本割)の税額が平成27年度より増える場合には、平成28年度(平成28年4月1日~平成29年3月31日)は増加分の75%について免除、

平成29年度(平成29年4月1日~平成30年3月31日)は増加分の50%、平成30年度(平成30年4月1日~平成31年3月31日)の増加分の25%が免除されます。

また、法人事業税の制限税率は、現行「標準税率の1.2倍」ですが、「標準税率の2倍」に引き上げられます。

キャプチャ事業税等の推移

 

 

②地方法人特別税の税率の改正

外形標準課税適用法人の所得割の標準税率が引き下げられたことに伴い、平成28年度の地方法人特別税の税率が引き上げられますが、平成29年度からは廃止されます。

キャプチャ地方法人特別税

 

欠損金の繰越控除制度の見直し

平成28年度改正により、所得金額に対する現行の控除限度割合65%が4年間で5%ずつ引き下げられます。

キャプチャ繰越欠損金

 

 

 

 

 

控除限度額割合の引き下げにより、繰越欠損金がある会社は、税効果のスケジューリング上加味する必要がありそうです。
また、DD等の企業価値評価の際にも、繰越欠損金がある場合には留意が必要そうです。

 

建物附属設備・構築物等の償却方法の見直し

建物附属設備と構築物の償却方法について、定率法が廃止され、定額法に一般化されます。

また、「鉱業用減価償却資産」の償却方法についても、定率法が廃止され、定額法又は生産高比例方のいずれか選択性になります。

キャプチャ減価償却資産

 

 

 

 

 

 

税務上の償却方法が変わることで、平成28年4月以降に取得する新規資産の会計上の償却方法を検討することになると思われます。但し、税制改正という理由だけでは会計方針の変更(会計上の償却方法の変更)における正当な理由には該当しないことから、変更するのであれば、合理的な理由が必要となります。

 

役員給与の見直し

役員給与について一部見直しが行われました。定額同額給与については、見直しはありませんが、事前確定届出給与については、「役員から受ける将来の役務の提供の対価として交付する一定の譲渡制限付株式による給与」については、事前確定の届出が不要とされています。また、利益連動給与については、利益連動給与の算定指標の範囲に「REE(自己資本利益率)その他の利益に関連する一定の指標」が含まれることが明確化されています。

 

キャプチャ役員給与

 

 

 

 

 

 

 

 

 組織再編税制の見直し

株式交換等にかかる組織再編税制について一部見直しが行われました。

共同事業を行うための株式交換等にかかる「役員継続要件(株式移転前の株式移転完全子法人等の特定役員のいずれかが株式移転に伴って退任するものでないこと)」について、「株式交換前の特定役員のすべてがその株式交換等に伴って退任をする株式交換等でないこと」に緩和等されることになりました。

 

措置法関係制度の廃止・期限延長等

租税特別措置法に規定されている各制度につき、以下のように廃止・適用期限の延長等が行われます。

(1)生産性向上設備投資促進税制

適用期限をもって廃止されます。

機械装置等の「即時償却又は5%税額控除」と建物、構築物の「即時償却又は3%税額控除」は平成28年3月31日で廃止されます。

機械装置等の「50%特別償却又は4%税額控除」と建物、構築物の「25%特別償却又は2%税額控除」は平成29年3月31日で廃止されます。

 

(2)雇用促進税制

適用期限が2年延長(平成29年度(平成30年3月31日)まで)され、一定の調整措置をすれば所得拡大促進税制との併用が可能となります。

但し、適用の基礎となる雇用増が雇用開発促進地域(有効求人倍率が低い特定の地域で、東京都、大阪府などは含みません。)に限定されます。

 

(3)地方拠点強化税制(雇用促進税制の特例)

一定の調整措置をすれば所得拡大促進税制の特例との併用が可能となります。

 

(4)環境関連投資促進税制(グリーン投資減税)

適用期限が2年延長(平成29年度(平成30年3月31日)まで)されましたが、風力発電設備の即時償却は廃止されました。

また、対象資産として、「太陽光発電設備を電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の認定発電設備」以外のものとする見直しや、税額控除の対象となる対象資産から車両運搬具が除外されています。

 

(5)交際費等の損金不算入制度

適用期限が2年延長(平成29年度(平成30年3月31日)まで)され、接待飲食費の50%(中小法人の場合は年800万円までのいずれか)の損金算入制度も適用期限が2年延長されます。

 

(6)中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入特例

適用期限が2年延長(平成29年度(平成30年3月31日)まで)されますが、対象法人から、「常時使用する従業員の数が1,000人超の法人」が除外されることになります。

 

地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

青色申告法人が、「改正地域再生法の施行日」~「平成32年3月31日」までの間に、”地方創生推進寄附活用事業(仮称)”に関連する寄附金を支出した場合には、一定額を税額控除するものです。

現行の寄附金の損金算入制度に加えて、法人事業税、法人住民税及び法人税から税額控除ができるようになります。

いわゆる個人版ふるさと納税とは制度趣旨や内容が大きく異なっています。

 

 

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